三連休最初の土曜日。本屋さんで子供たちの夏休みの本とドリル、それから自分の本も買いました。夏休みのはじまり、天気は曇り空ですが読書日和です。
「烏は主を選ばない」阿部智里
私が購入したのはこの本。
以前紹介した、「烏に単は似合わない」の続編です。
史上最年少(20歳の現役女子大生!)で松本清張賞を受賞した著者。前作「烏に単は似合わない」は華々しい傑作宮廷ファンタジーでした。
書評家、大矢博子さんの解説では、『十二国記』、『獣の奏者』、『巫女ソニン』の名作群と並び評されています。そしてこの本を読んだ私も思う。これは傑作ファンタジーの幕開けであると!
「烏に単は似合わない」もう一つの物語は光なのか影なのか
前作、「烏に単は似合わない」は妃の座を巡り争う、女たちの物語でした。ファンタジーでありながらミステリー、サスペンスの要素も持つ華やかな作品。そして物語は綺麗に幕を閉じた…かのように見えたのですが。
二作目「烏は主を選ばない」。女たちが後宮で火花を散らす間登場しない若宮は何をしていたのか。前作が宮中の女性の物語だとしたら今作は宮廷の男達の物語。
女たちが戦っている間皇子はなにをしていたのか?その答えが同じ時間軸で描かれたこの物語にたっぷりと描かれています。そして後宮での女たちの権力争いが大きな物語の中の小さな出来事、としてくるり、と反転する。その感覚が実に素晴らしい!前作もラストで物語の視点が急に替るどんでん返しがありましたが、今作にもその手法が存分に取り入れられています。これはミステリー好きには堪らない。
あらすじを少しだけ。
主人公は北の領地の次男坊、雪哉。周りからぼんくら呼ばわりされている次男坊の彼が、ひょんなことから同じようにうつけ呼ばわりされている若宮様の側仕えになることに。
しかし実は、主従共に一筋縄ではいかない性格で…。
とにかくくるくるよく動く、働き者の雪哉がかわいい。前作が華やかな女性の物語だったので男性ばかりの今作は地味かと思えばそんな事はございません。
主人公雪哉が可愛くて健気で賢くてまさにヒロイン。素晴らしくイケメンの若宮様も、実は妃より雪哉派なんじゃ…と言いたくなるくらいの入れ込みよう。
他にも若宮様の兄との跡目争いや、兄の配下である二人の対照的な男たちの争いなど、個性的なキャラクターが出てきてはくるり、とどんでん返しされる。
何度もいいますがミステリー好きには堪らない!
続きはどうなる!?
解説によるとこの2編の物語は実は序章。一見平安時代を舞台にしているようなこの物語、登場人物たちは実は人間ではなく卵から生まれる八咫烏です。(普段は人の姿をしているが飛ぶことも出来る)しかしこの設定は序章ではあまり語られてはいません。(1作目でミステリーのトリックとして使われてはいましたが)
若宮はこの世界の長、金烏であると言われています。しかし災いとも吉兆とも呼ばれる金烏とは何なのかは語られないまま。
若宮、妃、仲間たちが揃い、八咫烏の世界の物語はこれから本格的に語られていくのです!ああ読みたい!
第三弾「黄金の烏」は絶賛発売中。第四弾「空棺の烏」は2015年7月下旬発売予定。スペースの問題と予算的に、ハードカバーには手を出さない派なんですが。
文庫版、待てるでしょうか…。